【去勢・不妊手術における麻酔について】

去勢手術・不妊手術とは健康な動物をお預かりして健康なままお返しする手術であって、外科手術全体の中ではかなり特殊なカテゴリーに入る手術であると考えています。それだけに手術を行う動物病院に求められる責任は大きいと考えます。

時に麻酔の安全性について問われることがあります。健康な動物に麻酔をかけることについては、それなりの知識や技術、緊張感を持ちつつ行えば基本的には動物の健康や生命に問題が起こることはかなり少ないと考えています。

 

ASA(アメリカ麻酔科学会)が公表している患者の健康状態による全身状態分類を動物に当てはめてみると以下のようになります。

Class1:臓器疾患のない健康な動物

Class2:軽度の全身疾患のある動物

Class3:活動を制限する全身疾患に罹患しているが、全く動けなくなるほどではない動物

Class4:活動できない全身疾患に罹患していて、常に生命が脅かされている動物

Class5:手術の実施に係わらず、24時間生存することが期待できない瀕死の動物

 

去勢・不妊手術は通常ASA分類Class1~Class2の動物に行う手術と考えますが、調査によるとASA分類Class1~2の動物の麻酔事故率は0.05~0.33%と報告されています。

(人が1年間に交通事故に遭遇する確率は大体0.5%と言われています)

この事故率が高いと考えるか低いと考えるかはそれぞれかと思いますが、私達は事故率は0でなければならない0であるべきだと考えています。

なぜなら、去勢・不妊手術とは健康な動物をお預かりして健康なままお返ししなくてはならない手術だからです。

当院では麻酔の事故率を0にするために、麻酔に関する講習会にも積極的に参加し常に新しい知識や技術を導入して日々研鑽しています。

麻酔科講義の受講証・合格証です。

麻酔科の講義を前期4か月・後期4か月受講して最後の修了試験にもパスしました。

修了試験ではHigh Distinction(96-100点)の評価を頂いています。

 

最後の講義では「安全な麻酔薬は存在しない・安全な麻酔方法も存在しない・存在するのは安全な麻酔科医だけである」というありがたいお言葉を授かりました。

かけがえのない命を預かって麻酔をかけるからには、常に安全な麻酔医であるべきだと考えています。